2008年8月28日木曜日

Vol.103「2008年一人ツアー」の巻

 ツアーに来てくれたボーイズあんどガールズ、ありがと。仙台へ行く途中、雨の中たくさん田んぼをみた。緑、緑してた。こんな寒いのに緑なのが不思議やったが、考えてみれば、まだ八月。八月なのに寒いほうがおかしいわけや。いかがおすごしか。

 ライブが終わり、そんな田んぼをおもいだした。やがて黄色くなって稲刈りがはじまり、米ができる。稲刈り後の田んぼであそんでた。稲を刈った後の白く枯れた茎の部分にゴルフボールのっけてかっとばしたり、ボコボコの田んぼを走って凧あげたり、つんでるワラに火をつけてイモ焼いたり。そんな風に遊んでると、やがてその田んぼは耕されはじめる。寒い中、耕耘機で畑になってく。
 耕耘機のスクリューみたいなやつは白々とした田んぼの表面をほじくりかえし、黒々とした土に変えていく。ほんでタマネギの苗を植える畑になってく。うちの近所の畑や田んぼは季節を見せてくれた。
 毎年毎年季節と共にくりかえす。そん中で、来年はもっと旨い米やタマネギを作ったろうと、おいちゃんおばちゃん達は土から育ててて実験重ねて、年々たくましい米やタマネギを作ってく。僕は田舎にいた頃、そんな田園風景やおいちゃん達をみて、自分はそんな景色から抜け出すんだとおもってた。広すぎる空、同じ場所での繰り返し。僕にはできん、もっとおもろいことがたくさんあるんやないやろか。もっとおもれぇことをやらかせるじゃないか。
 んでぼくは抜け出した。東京にでて歌を歌った。ラジオで話した。テレビにでて話した。俳優まがいなこともした。いろんな街にもいった。いろんな人と出会った。別れた人もいた。僕がおもってたなんかおもろいことってのを、ほんの少しかもしれんが経験してきた。この何年かにほんといろんな経験をさせてもらった。

 んで僕は今回のツアーで改めておもった。

 僕は歌つくって、どこそこ行ってライブして、繰り返し繰り返し、届けてくことが僕の畑仕事なんだなーってあたり前におもえた。もっとこれだって歌を、もっと人の心にって、やってることは畑仕事と変わらんなーって仙台のライブ後にふとおもった。ほじくり耕されてく土をイメージして、やりたくなかったはずの畑仕事だが、自分には自分の畑があることが嬉しく思え、あんときのおいちゃん方と同じやなーとおもうと、自分はなんとひ弱だろうかと知らされたが、やったるでーと、僕は僕の力強い米やタマネギを目指して歌っていくべと改めておもった。
 この夏のツアーはまた、プレゼントを渡すみたいなライブでもあった。アコギ一本で目の前の人にそっと渡すような感覚があった。シンプルで、あったり前のことなのに、何度やってもそんなことに気付いたりするから面白い。

 人前に出るっちゅうのは、いまだに緊張するし、ちょっとした非日常な感覚があるからして、よりシンプルでいるってのはなかなか難しいが、この夏のツアーはプレゼントをそっと渡すよな、苗に土をかぶせるよな気持ちがあった。踏み込む度に波紋が広がる。自分は自分の畑で、これだっちゅうのを探し続けてく。遠くに旅してみつけた、自分の畑や。
 巡る季節と共に、繰り返し耕していけたらとおもう次第だ。きてくれたみんなありがとう。またいくからよ、今回よりずっとたくましい米やらタマネギをもってくから、楽しみにしていてもらいたし。

 気温の変化激しいこの頃、健康第一きいつけて、また来月。

おわり