2005年11月28日月曜日

Vol.70「今年の冬は寒くなりそうだ。いかがおすごしですか。」の巻


 あっというまに11月だ。
 いかがおすごしですか。
 夕焼けに立ち止まることの多い季節だ。
 いい季節すごしてますか。
 秋をちょいとすぎて、思い出すのは都会のすきとおる遥かな夕焼け、落ちる枯れ葉、飛んでく鳥、光るビルディングです。朝焼けもいい。 なんだろか朝焼けや夕焼けのあのしずけさは。その中にいると落ち着いてくる。素敵だ。照る照る太陽の昼でもなく、ネオンや星をつれてくる夜でもない、どこかへつれていってくれそうな遠い遥か。いいようも無く答えもなく、ただただ見つめるだけの時間。許されてくような、人や街や出来事をもうちっと好きになれそうな感じです。そんな気持ちに触れられるおかげで出来る我慢があったり、無理だとおもってたことがほんの少し前のほうにいけたりするのかもしれんな~とおもう、たった今だ。 
 
 なんでもない日、街を歩いてるとふと呼ばれたのは建物と建物の間の隙間。ボロっちい家につるの葉が伸びて西陽が当たる。なんでもないそんな隙間。なんでか少しわくわくする。探検しにいく年齢でもないし、不審人物だともおもわれたくない。とりあえず携帯で写真を撮ってまた別の隙間を探して歩く。
 子供の時はそんな場所があると入っていって確かめたくなる。なんがあるわけでもないのにそこを歩いてみたくなる。友達同士だとなおさら燃えて自分らが探検隊のようにおもえたりして、蛇の抜け殻見つけて、おおっ!ってなったり、ここはどこどこにつながってるんじゃないかと推測したりして興奮したりしてた。 ジャッキー・チェンを真似して壁と壁に手と足をついて登ったり落書きしたり虫を探したり、わくわくがいっぱいあった。ここは入れないなって路地もあった。薄気味悪くて嫌な感じがする所。ちょっとやめとこうと後回しにして、でもやっぱり気になって覚悟を決めて1人で足を踏み入れてみる。黄色や黒色したでかいクモが巣を張って通せんぼをしていて、なんとも言えない気持ち悪さで怖くて降参したくなる。何度も降参をしてきてみじめな気分は知っている。そのたんびに宿題が溜まっていくような気分。なかったことにしようとしても、心の中で薄気味悪い場所はどんどん薄気味悪くなっていく。よっしゃと腹ばいになってクモの巣をくぐり抜ける。あの黄色黒色のクモが張った巣は境界線だった。薄気味悪い場所は薄気味悪い場所だけど、それまでみたいに脅かされなくなったし、黄色黒色のクモも仲良くはなれなくても悪い奴じゃないなくらいはおもえた。そんだけでちっとだけ勇者な気持ちにもなれた。誰に言うわけでもない自分の中の勇者な気分。クモの巣を越えられるか越えられないか。いつまでたってもそんなことの繰り返しや。   
 なんでもない日。壁と壁の隙間に入らなくなった、クモの巣も昔よりも怖くなくなった。だけど今の僕には僕のクモの巣があるんだってこと、ちっとしたことで気持ちは変わるってこと、勇者の気持ち、それの気持ちよさ、おもしろさ。だよねって僕を呼んだ都会の壁の隙間だ。

 だんごむしがいそうだ あの板をひっくりかえしたい
 遊ぼうって隙間妖怪が呼んでる
隙ー間から~見上げてーみたーんでーすー
冬が来るね