2004年4月27日火曜日

Vol.51「僕と音楽 散歩道」の巻

 コンピューターからこんにちわ。 最近は暇があればぶらぶらと近所を散歩。ウォークマンでU2の「スタックインアモウメントキャンゲットアウトオブ」って曲を聴きながらぶらぶらする。この曲のイントロから好きで、ふぁあっとしくしくと胸の奥が熱くなる。意味はさっぱりわからんけど、記憶や過去から今が実感できる感じだ。そんだけで十分、ただのぶらぶらも楽しくなる。公園に落ちてたプラスチックのスコップも、そこから眺める新宿のビル群の灯りもおっことしてきた何かやら、そこから先のことも、ほどけて、許されて、怖くなく、ずっとこのままでと繰り返し聴く。音楽で心のどこかがふと変わる、景色が変わる。そんなことやっぱりあるもんや、とあらためて実感。本当は道行く人に聴かして回りたい気分になるけど、それぞれにそんな場所があるんだろうなぁと思いながらあきらめる。がそれでも調子にのると体を揺らして、広がれこの気分っと少し笑ってすれ違う。気味わるいかもしれんが、そんな気分の時はつまらんもんですがおすそ分け。
 音楽で変わるといえば中学生の頃、テレビから流れてきた長渕剛の「ろくなもんじゃねえ」にびっくりして、『ライセンス』ってアルバム買って、「ライセンス」という曲に全部包まれた。レコウドの針が“ばちばち”いって流れてきたこの曲は、それまで聴いてきたどんな曲より、リアルで、悲しくて、優しい曲。情熱、愛情、自由。長渕さんは、生きてく中で音楽という表現があることを教えてくれたし、その頃抱いていた空しさや、不安、迷いなんかも力に変えられることを教えてくれたひとだ。高校の頃、初めて弾いたガットギター。中庭で友達にGのコード教えてもらって、「とんぼ」のゥオーゥオーオーってとこ何回も歌った。へたくそでも、自分のなかでは完璧な感じ、強く何かがこみあげてくる感じがした。ずっと忘れんやろうなぁ。それから自分で歌を作ってみたり、路上で歌ったりしているうちに、いろんな人たちともつながって、メンバーとも出会えて今がある。
 あのアルバムや中庭から十数年。 今回、そんな大きなきっかけをくれた長渕さんのトリビュート(アルバム)に参加させてもらった。 参加者全員と本人参加の「しあわせになろうよ」のレコウディング。楽屋でアルバムのタイトルが『Hey ANIKI!』なだけに、ゆずの岩沢君やthe youthの中村君やらと、だれが最初に長渕さんのことをアニキって呼ぶかなんて話してると、長渕さん登場。ドキンと心臓が脈打って緊張してしまい、心の中で「バカ、これじゃただのミーハーじゃないか、同じ土俵の上で同じものをつくる人間同士だ!」と自分に言い聞かせてると、長渕さんがそれぞれのカバーした曲についてあれいいよねーっとかって話しだし、「“マイセルフ”やったの誰?」と。この曲は僕がやったので「僕っす」って答えると、「あれもいいねぇ、あそこのとこがさぁ」なんて細かい感想聞かせてもらって、「ありがとやす!」なんて話してると、「あれっ? お前なんか訛ってない? 田舎どこ?」「宮崎っす!」「ああ、そうなんだよ、宮崎の奴って訛りがとれないんだよ。宮崎はなまりか強いからなあ~」なんて笑いながら、いたずらっ子っぽく言われたので、「鹿児島ほどじゃないっすよ!」っていたずらっぽく返したら、「なにを~!」っとかって長渕さん。みんな笑って僕は緊張がほどけ、かなり楽しくレコーディングをさせてもらうことが出来た。帰り道一人かなり浮き足だった。おお長渕さんと歌ったよと、交わした言葉やら長渕さんの表情やら思いだしながら、恋のようだとも思いながら。がしかし、すぐに寒い風ふいて、あの頃もらったものを返していかんとなと、今日も大きな力もらったなあと、やっぱり僕は僕の歌でいろんな人や未来に返していくぞ、と浮き足立った足ぺたんとついて踏み締めながら家に帰った。長渕剛トリビュートアルバム『Hey ANIKI!』、ぜひ聴いてみてくださいな。


今回から、場所をB-PASS本誌からこちらのネットに引越してお届けすることになりました。写真もカラーで見られるようになりましたよ。中尾さん、みなさんこれからもヨロシクお願いします!

 写真は4月6日に行なわれた新宿LOFTでのライヴ・リハーサルのものです。